新居 - 深淵小町

本編
メモ
日記

本編

め「ここがみこっちゃんの家だよ、これ鍵ね」
命「ありがとうございます」
め「1ldkだから」
命「何ですか？それ」
め「リビング、ダイニング、キッチンと洋室が1つって事」
命「なるほど」
め「家具も普通にあるから心配しないで～っと。
　　はい、ここがリビング。取り敢えず荷物置きな」
命「はい」
め「一人暮らしって形になるけど、ご飯は昴ちゃんが作ってくれたのを食べればいいし、いつでも私を呼んで」
命「あ、あと彩枦さんとスノドロさんも呼べます」
め「連絡手段あるの？」
　(彩枦ちゃんってアメトリンでそこまで出来たっけ)
命「これ、持たされました」
め「き…キッズケータイ！！！」
命「防犯ブザーってのも付いてるみたいですよ、これ！」
め「ま、まあキッズケータイにはよくある機能だな」
命「あ、椅子が沢山」
め「この町の医者してくれるって聞いたから用意したよー。
　　ここが診療所になるって事だからね」
命「ありがとうございます！
　　あ、収納用の大き目の棚もある！」
め「そそ。色々考えたよー昴ちゃんが。
　　お風呂とかはあっちにあるからねー」
命「分かりました！」
め「それじゃ、私はここで」
命「はい、ありがとうございます。めごかさん、昴さん。
　　ここの事も、私の事も」
め「行き場を失った妖怪を受け入れるのがこの町だから。
　　ほいじゃ、12時にお昼ご飯だからねー」
命「はあい」

▲

昴「命はどうだった？」
め「表情も声も明るくなってた。
　　あと、耳が人外特有のものになってた」
昴「自分が妖怪だと自覚した事で身体変化が起こったんだろうな。
　　成長だな」
め「あー、今思ったんだけど、何でうちって困ってる妖怪を受け入れるようになったんだっけ。
　　最初はさ、私と、昴ちゃん、祈莉ちゃんで雨風凌ぐ為に作った共同住宅だったよね？」
昴「祈莉が居なくなった後、穴埋めみたいな形で路頭に迷ってた雲外鏡拾ったのが始まりだったはず」
め「そうだっけ。全然覚えてないや」
昴「お前はすぐ忘れるからな…」
め「すぐ忘れる事でする得もあるんだよ」
昴「そうだな。そうやって借金踏み倒そうとしたもんな」
め「あ、アレはすぐに全額返したから許してよ！」
昴「まあ未だに引き摺ってる彩枦よりはマシか…」

▲

命「よしっ。荷ほどきするぞっ。
　　荷物少ないからすぐ終わるよね。
　　まずは服、彩枦さんがくれたお菓子、真朱神社から持ってきた布団、ぬいぐるみ、着物、その他諸々。
　　あと、丹心さまの御神体…持ってきても良かったのかな。
　　…私だから、大丈夫だよねっ。
　　ふう、荷物少ないなあ。あ、まずはめごかさんから貰ったコレ読まないと。
　　『伊野紙歌町解体新書』…。
　　えー、『この町は変わった妖怪、力の強すぎる妖怪が住む所です。町内には多くの住宅と様々な施設があり、町を覆う強固な結界で外界と隔離されています。
　　生活については、プライバシーは最大限保証されるものとし、他者に危害を加えない限り自由です。
　　外界との行き来も自由ですが、出る際は町長、または副町長に許可を得る必要があります。
　　町内には百花山ひゃっかざんと呼ばれる山があり、山中にある神社ではミズハノメという神が祀られています。
　　月ごとに様々な行事が行われる他、町役場(兼町長宅)には魔界と繋がる鏡がございますが、現在魔界へ移動する事は出来なくなっています。
　　その他色々と不可思議な事が沢山置きますが、そういうもんだと思って受け入れて下さい。　終
　　🌟豆知識(裏技？)　お腹が空いたのにご飯が無いという時は、町長の下に行きましょう。無償でご飯を食べさせて貰えます。』
　　へえ～色々あるんだなー。何が起きても気にしないの精神で受け入れる事が大切なんだ。
　　うふっ。今度彩枦さんが来た時、説明の手間が省けるように、これに書いてある事ちゃんと覚えなきゃ」

メモ

今回は以上です。

命がめごかに渡されていた伊野紙歌町解体新書とは、コピー用紙をホッチキスでまとめた薄い手作り冊子です。
魔界に繋がる鏡は昴の言っていた雲外鏡とは別の鏡です。

・魔界とは(予習)
そのまんま魔法の世界。
魔界人＋αが住む。機械類も魔法で動く。
魔界人はもれなく特異体質であり、空気中に含まれている魔力を呼吸を通して体内に蓄積させる事が出来る(人によって蓄積出来る量に差あり)。
常世の一種であり、一応現世と行き来が可能だが、基本的に行き来は禁止されている。
…が、ごく稀に魔界人が現世にやって来るため、魔界の技術はちょこちょこ現世に漏れている。
こんなんだが別に排他的な訳ではないようで、現世人が住む事も可能。
何だか現在、崩壊の危機にさらされているらしい(！？)。