深淵小町

「しんえんこまち」と読みます。主に創作。

思い出話3

本編

*前回までのあらすじは前回参照。

彩「続きをどうぞ」
命「は、はい。
  これは今から数年前…」

『長い時を経て、丹心さまは急速に忘れられていきました。
 もう時代は昭和どころか平成です。
 最早肉体の維持もままならず、既に消えかかっていた丹心さまは、大事な話をする事に決めていました。』

丹「ふうん。もう私に残された信仰も残り僅か…いつ消えてもおかしくない」
命「丹心さまが消えずにいる方法はありますか」
丹「無いよ。
  人も霊も妖怪も神様も、誰からも認識も記憶もされなくなると、最初から居なかったのと変わらない」
命「…私がいるのに」
丹「ごめんね。命がどれだけ私を大切に思ってくれてても、それは信仰にはならない」
命「何でですか?」
丹「裏の森に沢山赤い動物がいるでしょ」
命「はい」
丹「私とずっと一緒に居た子、みんなああなるの。眷属ってヤツ。
  命、自分の髪の色、小さい頃と違うの、気付いた?」
命「確かに、赤くなってる気がします」
丹「そうでしょ?それに、ずっと前から自分の身体が成長してない事も気付いた?」
命「それは…」
丹「私が消える前に大事な事、ちゃんと言わないとね。
  命、あなたはとっくに人間じゃなくなっている」
命「………」
丹「普通、人間は20年程で大人になる」
命「…あの時から何年経ってるんでしょうか」
丹「もう覚えてないけど、もう100年近くかも。ほら、人間とそれ以外の時間感覚は大分違うから」
命「そんなに」
丹「君の時間感覚が、人ならざる者のそれになっている証拠ね。だから、先に言っておくね。
  さよなら。
  私がいなくなったら、森に居る子達も散り散りになるだろうけど、命は何も気にしないで」



命「丹心さまに人間じゃなくなってる、って言われても、そこまでショック受けなかったのは」
彩「本当は自分が人間じゃない事なんてとっくに分かっていたから?」
命「そうかもです」
彩「分かるよ。ワタシも昔は普通の人間だった」
命「彩枦さんも?」
彩「未だに自分が何て名前の人外なのか分からんけど」
命「私もそうです。全然知識が無いから、病気と人間じゃない何かを上手く結び付けられなくて…。
  ああなって…」
彩「みこっちゃん!ぶっ倒れそうになってんぞ!
  一旦休む?」
命「だ、大丈夫です。ここまで来たら…ちゃんと話します」

『それから程なくして、丹心さまはいなくなりました。
 影も形も無く。確かに存在した痕跡はあれど、もうどこにもいませんでした。』

命「しばらく意味が分からなくてぼーぜんとしてたんですけど、ある日神様が来たんです」
彩「丹心さんと仲良くやってた神様?」
命「そうです。言ってた事を要約すると、『同胞が次々信仰を失って消えて行っている、アンタは大丈夫か』って」
彩「確かに不安よね」
命「丹心さまはいないから、私が出たんです」
彩「それで、どうなった?」
命「その神様は、初めて会う神様で。何と言うか、結構キツめの視線で…。
  『お前何?』みたいな…。
  それで、凄く失礼なんですけど…怖くてその場で扉を強く閉めちゃって。そしたら、言われたんです」
彩「何て言われたの?」
命「…『お前まさかアイツに何かしたんじゃないだろうな』って。
  私、凄く怖くて。さっき、丹心さまは顔が広かったって言いましたよね」
彩「言ったね。確か
命「今の事が、丹心さまと仲が良かった沢山の神様に知られたらどうしようって。
  そうしたら神様全員に恨まれる事になるんじゃないかって」
彩「…それで?」
命「いてもたってもいられなくなって、急いで荷造りして、外は慣れてないけど、夜の内に、頑張って神社から出て行きました。
  迷って迷って、神様に関する物を避けながら辿り着いたのが」
彩「横須賀市*1ってワケ」
命「そうです」
彩「なーるほーどねー。話は分かった。
  よし、ちょっと待って、めごかちゃんとばるさんに電話する…あっち圏外じゃねーか!」

メモ

今回は以上です。
超ナイーブな箱入り娘として育てられたみこっちゃんは、見ず知らずの神様に睨まれた事が怖くてたまらなかった訳ですね。
チキンです。
内心自分の出る幕は無いと悟った彩枦、あとはめごかと昴(とスノドロ)に任せる気満々。
でも短時間移動という大事な仕事はやり遂げます。

日記

受験が着々と近付いて来てます。
その前に期末テストなんだけど。
モチベーションガタガタだけど頑張るしかやることがない。

*1:※とりのあし時空