深淵小町

「しんえんこまち」と読みます。主に創作。

🐤の昔

本編

*前回までのあらすじ
ことり昏倒

ー神話の時代、川辺に巨鳥が住んでいた。
巨鳥は川の水が綺麗である事を好み、穏やかな気性の持ち主だった。
人間に危害を加える事も無かったので、人間とはお互いに干渉しなかった。
しかしある日、人間の女性が誤って川の水を汚してしまう。するとみるみる巨鳥の心は荒み、人里に飛んできては暴れ廻るようになってしまった。
一夜にして里は壊滅状態となり、怯えた人々は巨鳥に対抗せんとしたが、全く敵わなかった。
それどころか人間から傷を受け、巨鳥を止めようとした巨大タコに絡み着かれた事で巨鳥の心は更に荒み、被害は増大した。
最終的に巨鳥が暴れ疲れて地面に墜落するまで、人間はなすすべも無く逃げ惑うしかなかった。

巨鳥が起こした嵐が収まった頃、壊滅した里を妖怪達が見に来くると、巨鳥は全身傷だらけの状態で倒れていた。
既に傷は乾いて血も止まっていたが、動く気力も無いらしく、流石に哀れに思った妖怪達は巨鳥を手当てしてやった。
時間が経ち、動けるようになった巨鳥は、妖怪達に自分が人間から受けた仕打ちを話した。
妖怪達は人間と交易をして友好的な関係を築いていた種族であったため、巨鳥に同情しつつ、自分達が人間との交流で得た物を語って聞かせた。
何か月も何年も妖怪達の話を聞き続け、やがて巨鳥の人間への認識は和らいだ。
自分に害を与えないのであれば、交友関係を持ってみたいと思うようになった。
そんな心の表れか、いつしか巨鳥は人間に似せた姿を取るようになった。

それから数年が経ち、今や巨鳥は人間と共に生きるようになった。
里を壊滅させる程の強風を起こす力は、上手く抑えれば大いに人の為になった。
かつて川を汚され、身体に傷を受けた事は思い出話となった。
すっかり人間に友好的になっていた巨鳥だったが、かつてより力が弱まった事への不安や、海で突然自分を襲ったタコへの恐怖心と恨みは今も残り続けていた。ー

み「こ…これが」
音「ことりさんの(前半は)哀しき過去…」
み「こんな本を家に置いとくなんてアイツ意外と…そういう奴だったのか
  でも私にあんな契約を持ちかけて来るって事は、昔の川の主やってた頃に戻りたい気持ちもあったんだろーな」
音「契約って何、みなこ?」
み「ヤベッ言っちまった!」
音「契約したの?私以外の奴と…」
み「黙ってて悪かった音海、恥ずかしいから言うなってことりに言われたもんで」
音「そうなんだ。いや別に怒ってるとかじゃないんだけど」

こ「ねえ、みなこ。悪魔の契約って、一人としか出来ないの?」
み「いや?何人でもいけるぜ」
こ「じゃあ私とも契約して」
み「マジで!?いやまあ契約してくれるとか万々歳なんだが。
  リスクとして死後地獄に落ちるがよろしいか」
こ「別に良いわ。死なないから」
み「強気だな。じゃあ早速願いを言って貰おうか。何でもいいぜ。悪魔に不可能は無い」
こ「分かった。私の願いは…『神様に戻ること』」
み「神様に戻る?」
こ「さ、叶えて、この場で」
み「お前は元神様だったのかよ」
こ「何か不都合でもある?地獄の連中と敵対するような神ではなかったはずだけど」
み「別にそういうわけじゃないんだが。確かにお前からは神特有の気配じゃなくて強い妖気を感じるぜ」
こ「神様だったはずがいつの間にか妖怪になってたのよ。可笑しいわ」
み「訳も分からず零落したのは受け入れられないわな。じゃ、叶えるぜ、ほい」
こ「今ので叶ったの?」
み「ああ完璧だ。今お前は神様に戻ったんだ。昔のように」
こ「嬉しい。風を制御出来る様になったのは力が弱まったからだと気付いて以来、ずっと気にしてたのよ。
  ありがとうございます」

み「こんなんだ」
音「切実だね…」
み「お前も相当だろ」
音「そうだっけ、あんまり当時の事覚えてない」
み「私との契約の効果はてき面だったみたいだな」
音「そうだね」
み「一階に戻るぞ」
音「うん」

メモ

今回は以上です。
みなこは悪魔なので、死後魂が地獄に落ちる事確定になるのと引き換えに何でも願いを叶えてくれます。
多くの人間と契約を結ぶ程、上司のルーシー(ルシファー)さんから貰える報酬(おやつ)が増えます。
不老不死がデフォな妖怪の類にとってはノーリスクで願いを一つ叶えられる取引という訳です。

日記

テスト3日目終わりました。
疲れました。
眠いです。
おやすみなさい。